日常業務でもマネジメントでも、頻繁に登場するのが「部下に指示する」「上司へ報告する」「同僚と連携する」といったコミュニケーションです。
しかし、いざ英語で話そうとすると、「部下」「上司」「同僚」をどの単語で表現するのか、依頼の強さをどう調整するのか、迷ってしまう方は多いのではないでしょうか。
この記事を読めば、
- 「部下」「上司」「同僚」を表す英語表現の違いと正しい使い分け
- 依頼・指示・お願い・命令の強さを調整する英語の基本構文
- 実務でそのまま使えるシーン別のフレーズ
などがわかりますよ。
「英語でどう指示すれば失礼にならない?」「部下を鼓舞しつつ責任を伝えるには?」と悩む方は、ぜひご一読ください。
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まず押さえるべき「部下・上司・同僚」の英語表現の違い
英語圏の職場の上下関係と日本の職場の上下関係では、同じ「部下」「上司」「同僚」という言葉を使っても受け取るニュアンスが違うことが多く注意が必要です。
「部下」「上司」「同僚」を適切に表現できるかどうかは、信頼関係を築くだけでなく誤解を避ける意味でもしっかりと押さえておきたいもの。
まずは、基本的な呼び方の違いから整理していきましょう。
subordinate / team member / junior のニュアンス
英語で“subordinate(部下)”という単語は存在しますが、ビジネスの現場ではほとんど使いません。
階級的で上下感が強いため、軍隊・法務・組織図で見かける程度です。
代わりに使われるのが以下の表現です。
- team member:同じチームのメンバー(上下に関わらず柔らかい)
- junior:職務経験が自分より浅い人
- direct report:自分に直接レポートする人(実務で最も自然)
特に「直属の部下」は my direct report が最も自然です。
例:I have three direct reports in my team.
(私のチームには直属の部下が3人います。)
boss / supervisor / manager の使い分け
上司を表す英語は、各単語でニュアンスが異なります。
- boss:感覚的で一般的。砕けている
- supervisor:監督・管理者。工場・店舗・現場で多い
- manager:部門責任者。ホワイトカラー的な職場で一般的
「部長」を直接英語化するのではなく、役割で伝えるのがポイントです。
例:He is the marketing manager.
(マーケティング部門の責任者)
colleague / coworker / peer の違い
日本語では「同僚」で一括りですが、英語では明確にニュアンスが変わります。
- colleague:同じ会社・部署で働く人
- coworker:同じ職場にいる人(業務範囲が近い)
- peer:同じ職位・同格の人
チーム内での調整や依頼では colleague、役職関係を意識した会話では peer が自然です。
力関係や距離感を表す英語文化(上下関係・境界)
日本語は空気を読んで伝える文化ですが、英語は「言葉で境界を明確にする」文化です。
そのため、命令・依頼・相談を文法で区別する必要があります。以下の表現をしっかりとおさえ、立場や関係に応じて適切に使いましょう。
Can you …?(依頼|フラット・協力要請)
「〜できる?」というニュアンスです。立場に関係なく使える、最も日常的で負担の少ない依頼です。
- Can you check the schedule?
(スケジュールを確認してくれませんか?)- Can you update the document by tomorrow?
(明日までに資料を更新してくれますか?)- Can you share the file with the team?
(そのファイルをチームに共有してくれますか?)
部下にも同僚にも使える、ニュートラルな依頼です。
Could you …?(丁寧な依頼|1段階柔らかい)
日本語の「〜していただけますか?」に相当する柔らかい表現です。礼儀・配慮が必要な場面で非常に便利です。
- Could you prepare the slides for the meeting?
(会議用のスライドを準備していただけますか?)- Could you help me review this report?
(このレポートの確認を手伝っていただけますか?)- Could you send the invoice to the client?
(請求書をクライアントへ送っていただけますか?)
目上・初対面・重要案件に適しています。部下に対しても丁寧さを保ちたい時に有効です。
I need you to …(強い依頼|業務上の必要性)
文字通り「あなたに必要なこと」。単なる「お願い」ではなく役割・責任を伴う依頼です。
上司→部下の実務で使われますが、命令ではありません。
- I need you to finish the report by Friday.
(金曜までにレポートを終わらせてください。)- I need you to focus on this task first.
(まずこのタスクを優先して取り組んでください。)- I need you to talk to the client and clarify the issue.
(クライアントに連絡して問題を確認してもらう必要があります。)
業務上の必然性を含むため、強さは中〜強といったところです。緊急・重要な案件で適切です。
You must …(命令|強制・規則・絶対)
逃げ道なしの、強制・規則・規範を伝える構文です。日常業務ではほぼ使いません。安全・コンプライアンス・重大トラブル時など、例外的なシーンで使用します。
- You must submit the report by 5 PM.
(17時までに必ず報告書を提出しなければなりません。)- You must follow the security procedure.
(セキュリティ手順に従わなければなりません。)- You must not share confidential information.
(機密情報を共有してはなりません。)
義務・禁止事項の伝達に限定されます。通常の指示に使うと高圧的・失礼に聞こえます。
ポイント整理
- Can you:協力依頼
- Could you:丁寧な依頼(ビジネス最安全)
- I need you to:必要性を伴う強い依頼(責任)
- You must:命令・規則(例外的)
英語は敬語ではなく「依頼構文の選択」で上下関係が伝わるため、相手との距離感に応じて文法で強さを調整する習慣が重要です。
部下への指示に使える基本英語フレーズ|失礼にならない伝え方
英語の指示は「短く・具体的に・曖昧さなし」で伝えることが求められます。
日本語のように「…できるよね?」という遠回しな言い方は、英語では曖昧な印象を与えてしまうこともあるため注意が必要です。
ここでは、実務で使える基本フレーズを丁寧度の階段とともに紹介します。
シンプルで直接的な指示表現
◆Please do 〜.(~してください。)
もっとも一般的で柔らかい依頼。
例:Please do the data check.
(データチェックをしてください。)
◆Could you 〜?(~していただけますか。)
丁寧・協力を求める。
例:Could you update the spreadsheet?
(スプレッドシートを更新していただけますか?)
◆I’d like you to 〜.(~してほしいです。)
「こうしてほしい」という意思表示。
例:I’d like you to handle the presentation.
(プレゼンを担当してほしいです。)
◆You are responsible for 〜.(あなたの担当は~です。)
正式な役割付与・責任。
例:You are responsible for managing the client.
(そのクライアント対応をあなたが担当します。)
“責任”を意味する表現は強いため、初回や日常依頼では避けましょう。
優先順位・役割分担の伝え方
仕事を振る際、優先度を明示するだけで成果が大きく変わります。
以下の表現を使い、優先順位や役割分担を明確に伝えましょう。
- This is the top priority.
(これは最優先タスクです。) - Let’s divide the tasks as follows.
(以下のようにタスクを分担しましょう。) - I need you to focus on 〜 first.
(まず〜に集中してほしいです。)
「なぜそれが重要なのか」を一言添えることで、部下の納得と自走を促すことができます。
締切・納期の伝え方
日本語では「できれば〜までに」と曖昧になりがちですが、英語では日付・時間・目的を明確に伝えます。
◆The deadline is 〜.(締切は〜です。)
例:The deadline is next Monday.
(締切は次の月曜日です。)
◆Please complete it by 〜.(〜までに完了してください。)
例:Please complete it by Friday.
(金曜日までに完了してください。)
◆We must deliver it before 〜.(〜までに必ず納品しなければなりません。)
例:We must deliver it before the client’s review.
(クライアントのレビュー前に必ず納品しなければなりません。)
ただし、must は強制ぐあいが高いため、緊急時のみ使用しましょう。通常は by 〜 が自然です。
例)Please complete it by Friday.
(金曜日までに完了してください。)
シーン別|部下に使える英語例文
ここからは実務で直ちに使えるフレーズを、場面ごとに整理して紹介します。
メールでも会話でも使えるシンプルな表現に絞っています。
業務内容の説明
- Here is what I need you to do. →手順の提示
(これからお願いしたいことは以下の通りです。) - Let me walk you through the task. →具体的に案内
(この作業について説明しますね。)
例:Here is what I need you to do. First, collect the latest numbers. Then summarize the key findings.
(これからお願いしたいことはこうです。まず最新の数値を集めてください。次に重要なポイントをまとめてください。)
進捗確認・リマインド
進捗の確認はきつい言い方ではなくあくまで状況を共有する意図で伝えましょう。
- How is the task going?
(作業の進み具合はどうですか?) - This is a reminder that 〜.
(〜についてのリマインドです。)
例:This is a reminder that the deadline is tomorrow.
(締切が明日であることをお知らせします。)
期限延長・追加タスク依頼
期限の延長や追加タスクを依頼するときは、相手の都合を考慮しつつ、威圧的にならないよう適切な表現を慎重に選びましょう。
- Could you extend the deadline to 〜?
(締切を〜に延長していただけますか?)- Can you take care of this additional task?
(この追加タスクを対応してもらえますか?)
“Can you” は日常的な追加依頼に自然です。
顧客対応・会議準備
- Please contact the client regarding 〜.
(〜に関してクライアントへご連絡ください。)- Please prepare the materials for tomorrow’s meeting.
(明日の会議用の資料を準備してください。)
“regarding〜”は商談・営業で多用され、丁寧かつ事務的に伝わります。
資料作成・報告
- Can you draft the report by 〜?
(〜までにレポートを作成してもらえますか?)- Could you summarize what you found?
(わかったことをまとめていただけますか?)
“summarize”は会議後によく使われます。曖昧な write は避け、draft / summarize / outlineなどを使うとプロらしい印象になります。
フィードバック・注意・評価に使える英語表現
部下の成長を支えるには、伝え方の丁寧さと明確さのバランスが重要です。
否定的な言い方が多い日本語の職場文化と異なり、英語圏では肯定→改善→次の行動という構造が基本です。
改善点を伝える(直接・遠回しの2軸)
改善を促す際、英語では相手を責めず、対等な立場を保ちながら指摘する表現が重視されます。
“suggest”や“consider”を使うことで、命令ではなく提案として伝えることができ、威圧感を避けられるため実務で非常に便利です。
◆ I suggest you 〜.(〜することをおすすめします。)
例:I suggest you double-check the figures.
(数値を再確認することをおすすめします。)
◆It would be better if you could 〜.(〜していただけるとより良いです。)
例:It would be better if you could send the draft earlier.
(ドラフトをもう少し早く送っていただけると助かります。)
◆You may want to consider 〜.(〜を検討してみてもよいかもしれません。)
例:You may want to consider changing the layout.
(レイアウトを変更してみてもよいかもしれません。)
suggest や consider は対等な関係を保ちながら改善を促す柔らかい表現です。直接指示が必要な場面でも、抑圧感を避けられるため重宝します。
ミス対応・緊急対応
- Let’s look into what caused this.
(これが起きた原因を一緒に確認しましょう。)- Here’s what we will do next.
(次に私たちが取る対応は以下の通りです。)
責任追及ではなく、一緒に解決する姿勢を示すのが基本です。“Let’s”で始めると心理的距離が縮まり、部下を責めずに前へ進む雰囲気をつくれます。
強い表現(断言・指導)
- This must be done by 〜.
(これは〜までに必ず完了しなければなりません。)- We can’t compromise on this point.
(この点に妥協はできません。)
品質・法務・セキュリティ分野での使用に適しています。
不必要な場面で乱用すると部下の信頼を失うため、重要・緊急・リスク領域に限定すべき表現です。
褒める・感謝する
- Great job on 〜.
(〜の取り組みは素晴らしかったです。)- I really appreciate your effort.
(あなたの努力に本当に感謝しています。)
短くても十分に伝わります。
英語圏では成果だけでなく努力や貢献を頻繁に言葉で伝える文化が根付いているため、日常的に使って問題ありません。
メンタルケア・寄り添い
- Let me know if something is bothering you.
(何か気になっていることがあれば教えてください。)- How can I support you?
(私に何かサポートできることはありますか?)
成果だけでなく、感情面もケアすることは健全なチーム運営に不可欠です。
部下は「責める上司ではなく支える上司」に心を開きます。実務では、こうした一言が想像以上に大きな効果を生みます。
部下の育成・人事評価で使う英語表現
部下との1on1や目標設定では、「希望を引き出す」タイプの質問が有効です。
単に評価するのではなく、伴走する姿勢を示しましょう。
目標設定
- Let’s set a realistic goal for 〜.
(〜に対して現実的な目標を設定しましょう。)- What are your priorities this quarter?
(今四半期のあなたの優先事項は何ですか?)
“realistic”は「達成可能な」という意味です。高すぎる目標を排除し、実務的な進捗を促します。
評価面談
- Here are your strengths.
(あなたの強みは以下の通りです。)- Let’s talk about areas to improve.
(改善すべき点について話しましょう。)
「強み→改善点」の順序は英語圏の定番です。心理的抵抗なく会話に入ってもらえます。
育成・成長支援
- I’d like to help you grow in 〜.
(〜の分野で成長できるようにサポートしたいです。)- How would you like to improve your skills?
(どのようにスキルを伸ばしていきたいですか?)
成長の方向を本人に決めてもらう問いかけです。自律的なキャリア形成を促すときに使えます。
部下に適切に指示・依頼を伝えるために
上記英語フレーズを覚えることはもちろん大切ですが、実際の会話では単なる丸暗記では学んだ表現を使いこなすことはできません。
部下に英語で適切に指示・依頼を伝えるためにはリスニング力が必要な理由と、その向上方法を解説します。
リスニング力が必須の理由
部下に英語で指示を出したり、努力を認めて褒めたりする場面では、単語やフレーズを覚えるだけではうまく対応できません。なぜなら、英語の表現は常に会話の前後の文脈や、相手の感情の温度に依存しているからです。
例えば、部下が次のように報告してきたとします。
I tried to finish the report by noon, but I couldn’t get the updated data from the system.
(正午までにレポートを完成させようとしましたが、システムから最新データが取得できませんでした。)
本来この場面で求められる反応は、
Understood. Let’s check why the data wasn’t available.
(わかりました。データが取得できなかった原因を確認しましょう。)
というように、状況を踏まえた上で次の具体的な行動につなげる姿勢です。
当たり前ですが、状況を理解できずYou should do better next time.(次はもっと頑張って。)などと返してしまうと、努力を理解していないうえに課題を個人の能力不足として捉えている印象を与えてしまいます。
これは、あなたが部下に具体的な指示を出す場合も同じです。単に Please do this.(これをやってください) と命令形で伝えるだけでは、部下は
- なぜその作業が必要なのか
- どこに注意すべきなのか
- 何を優先すべきなのか
といった判断の材料を持てません。
部下の説明や状況報告を正しく聞き取り、それに応じて優先順位・目的・期待値を補足することで、初めて仕事はスムーズに進みます。
つまり、部下との英語コミュニケーションを成立させるために必要なのは
- 相手の言葉を正確に聞き取る力(リスニング力)
- 状況・感情・背景を理解したうえで適切な表現を選ぶ判断力
この2つです。
指示・評価・感謝のいずれも、単語さえ知っていれば成立するものではありません。前後の文脈や相手の心理状態を踏まえたうえで初めて「自然で伝わる」英語になります。
英語での部下マネジメントは、言い回しのテクニック以上に、相手の話を正しく受け取る聴き取り力が土台なのです。
シャドーイングでリスニング力向上
前述の通り、部下に英語で指示を出したり、成果を認めて褒めたり、改善点を伝えたりするには、相手の発言を正確に聞き取り、状況や感情のニュアンスを理解するリスニング力が欠かせません。
その力を効率的に鍛えられる方法がシャドーイングです。
■ シャドーイングとは?
シャドーイングとは、英語の音声を聞きながら1〜2語遅れて声に出して真似するトレーニングです。スクリプト(台本)を見ずに行うため、実際の会話と同じ「音だけを頼りに理解する」状況で耳を鍛えられます。
■ シャドーイングの効果
シャドーイングを継続すると、英語の音を単語やフレーズとして瞬時に認識する「音声知覚」が鍛えられます。 これは、部下とのコミュニケーションにおける“短い・速い・崩れた”自然な英語を聞き取る上で極めて重要です。
例えば、部下が会議中にこう言ったとします。
I’ll send the draft later(後でドラフトを送ります)
ネイティブの発話では以下のように音が変形します。
I’ll send the draft later.→(アウセンナドラフッレイダー)
文字で知っている表現でも、音として崩れた状態で聞くとまったく別物に感じられます。その結果、重要な依頼・状況説明・優先順位のサインを聞き逃してしまうこともあるのです。
音声知覚が鍛えられると、こうした変化した音でも瞬時に語彙として浮かび上がり、意味処理に余裕が生まれます。音 → フレーズ → 意味の処理がスムーズになり、ネイティブのスピードでも正しく内容を聞き取れるようになるのです。
結果として、部下に対する依頼や指示のフレーズを適切に使えるようになり、コミュニケーションそのものがスムーズになります。

まとめ|部下との英語コミュニケーションは「表現×リスニング」
部下に英語で仕事を任せるとき、必要なのはフレーズの学習だけではありません。
依頼・提案・指導・評価——これらを柔らかく誤解なく伝えるためには、相手の言っていることや状況を理解するリスニング力が必要不可欠です。
シャドーイングを英語学習に取り入れ、リスニング力を向上させましょう。
英語で仕事を任せる力を伸ばすなら「シャドテン」

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